東海愛知新聞:2026年4月15日(水)掲載

あなたは、人生のハンドルを握れていますか?
東海愛知新聞コラム連載第3回。
誰もが「依存」から始まる人生。では、どうすれば自らハンドルを握り、自立へと向かえるのか——。
ゲーム障害、スマホ依存、不登校。社会問題の根底にある「自分らしさ迷子」という視点から、脳科学が示す解決の糸口をお伝えします。
依存と自立の狭間で生きる私 ― 真の「自分らしさ」を届ける使命と覚悟 ―

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依存と自立の狭間で生きる私
~真の「自分らしさ」を届ける使命と覚悟~

 もしも人生に次の二つの選択肢があるとしたら、あなたはどちらを選びますか?
誰かにハンドルを委ねる波乱万丈な人生、自らハンドルを握り困難に立ち向かう波乱万丈な人生。多くの親は、転ばぬ先の杖で、わが子には波乱万丈ではなく、順風満帆な人生を歩ませたいと望みます。しかし、わが子に最期まで寄り添うことはほぼ叶いません。人がこの世に出た時は「おぎゃあ~」と泣くだけです。親に大切にされるか、放置されるか自分では決められません。誰しも例外なく「依存」から始まる人生のハンドルを、あなたはどうやって握るのかその術をご存じでしょうか。
 子どもは遊びが仕事です。1960年、私は、岡崎城から西へ約870mの八帖町で生まれました。小さい頃は幼馴染みの女の子とお寺の境内で遊び、幼稚園からは近所の男坊主とぺっしゃん(めんこ)に明け暮れ、春から夏は日が沈むまで、田んぼのメダカやザリガニと睨めっこするのが日課でした。高校も大学も“大人の事情”が見え隠れする先生の助言に従い決めました。入学式当日、独り暮らしの新天地で迎えたキャンパスでワンダーフォーゲル部に惹かれ、入部したとき、青春を謳歌する喜びに胸が高鳴りました。82年10月、私は北アルプス「大キレット越えパーティ」のリーダーとして決断の朝を迎えます。初冠雪、強風でテントのポールが折れ、聳え立つ北穂高岳の氷壁を前にして、後輩の命を預かる責任の重さに足がすくみました。この時、私は生まれて初めて、自らの意志で一歩を踏み出す勇気の大切さを学んだ気がします。
 あの決断からわずか43年、Windows95、iPhone、SNSの登場により情報量は爆発的に増え、AIの浸透で社会の常識は激変しました。WHO(世界保健機関)は、2019年にゲーム障害を疾病として認定しました。「ネット依存」は、怠惰な性格ではなく、「脳の問題」なのです。2024年、WHOが発表した数値に戦慄が走ります。なんと、世界で約4億人(15歳以上人口の7%)が飲酒問題を抱え、年間260万人がアルコール依存で亡くなっています。
日本での「スマホ依存」も深刻です。令和6年度に厚生労働省が行った「ゲーム依存・ネット依存の全国調査」によると、若者の10人に1人は、ネットの病的使用やゲーム障害の疑いがあると報告されています。しかし、これは若者に限りません。50代のトラック運転手が「ながらスマホ」で招いた悲惨な死亡事故がそれを物語っています。昨年秋、豊明市は「スマホ使用は1日2時間以内」を目安とする条例を施行しました。行政が動かざるを得ないほど依存問題は深刻になっているため、学校や企業では「自分らしさ」が問われます。しかし脳の仕組みを踏まえた「自分らしさ」や「自尊心」を育む教育プログラムは殆ど見当たりません。ここに「自分らしさ迷子」や「不登校」を量産する要因がある気がします。ゲームや買物などの行動依存、アルコールや薬物などの物質依存、親子関係や夫婦関係などの人間関係依存・共依存も「自分らしさ迷子」が深く関係しているのではないでしょうか。心の穴を何かで埋めようとする行為が依存の本質だとしたら、「科学的自己理解」や「社会脳」から生まれる良好な人間関係の構築は、その穴を埋める有効な手段になり得ます。
 会社員時代、私は、時代のニーズに合った改善・改革に努めました。その一例が会社と社員の双方に大きなメリットをもたらす「確定拠出年金(DC)制度」の導入です。事業を導入する際、中核となる要素に、社会性・新規性・信頼性が挙げられます。私たちの脳は生得的に「社会を構築することができる機能」をもっています。だから社会を形成することで生き延びてきました。これを「社会脳」と呼びます。今の時代こそ、波乱万丈な人生のハンドルをしっかり握り、レジリエンスを高める「社会脳」を最大限に活用させなければなりません。
 次回は、「社会脳から見た自分らしさ」について、お伝えしたいと思います。

 

 

 

[テキスト全文]
依存と自立の狭間で生きる私

~真の「自分らしさ」を届ける使命と覚悟~

 もしも人生に次の二つの選択肢があるとしたら、あなたはどちらを選びますか?
誰かにハンドルを委ねる波乱万丈な人生、自らハンドルを握り困難に立ち向かう波乱万丈な人生。多くの親は、転ばぬ先の杖で、わが子には波乱万丈ではなく、順風満帆な人生を歩ませたいと望みます。しかし、わが子に最期まで寄り添うことはほぼ叶いません。人がこの世に出た時は「おぎゃあ~」と泣くだけです。親に大切にされるか、放置されるか自分では決められません。誰しも例外なく「依存」から始まる人生のハンドルを、あなたはどうやって握るのかその術をご存じでしょうか。
 子どもは遊びが仕事です。1960年、私は、岡崎城から西へ約870mの八帖町で生まれました。小さい頃は幼馴染みの女の子とお寺の境内で遊び、幼稚園からは近所の男坊主とぺっしゃん(めんこ)に明け暮れ、春から夏は日が沈むまで、田んぼのメダカやザリガニと睨めっこするのが日課でした。高校も大学も“大人の事情”が見え隠れする先生の助言に従い決めました。入学式当日、独り暮らしの新天地で迎えたキャンパスでワンダーフォーゲル部に惹かれ、入部したとき、青春を謳歌する喜びに胸が高鳴りました。82年10月、私は北アルプス「大キレット越えパーティ」のリーダーとして決断の朝を迎えます。初冠雪、強風でテントのポールが折れ、聳え立つ北穂高岳の氷壁を前にして、後輩の命を預かる責任の重さに足がすくみました。この時、私は生まれて初めて、自らの意志で一歩を踏み出す勇気の大切さを学んだ気がします。
 あの決断からわずか43年、Windows95、iPhone、SNSの登場により情報量は爆発的に増え、AIの浸透で社会の常識は激変しました。WHO(世界保健機関)は、2019年にゲーム障害を疾病として認定しました。「ネット依存」は、怠惰な性格ではなく、「脳の問題」なのです。2024年、WHOが発表した数値に戦慄が走ります。なんと、世界で約4億人(15歳以上人口の7%)が飲酒問題を抱え、年間260万人がアルコール依存で亡くなっています。
日本での「スマホ依存」も深刻です。令和6年度に厚生労働省が行った「ゲーム依存・ネット依存の全国調査」によると、若者の10人に1人は、ネットの病的使用やゲーム障害の疑いがあると報告されています。しかし、これは若者に限りません。50代のトラック運転手が「ながらスマホ」で招いた悲惨な死亡事故がそれを物語っています。昨年秋、豊明市は「スマホ使用は1日2時間以内」を目安とする条例を施行しました。行政が動かざるを得ないほど依存問題は深刻になっているため、学校や企業では「自分らしさ」が問われます。しかし脳の仕組みを踏まえた「自分らしさ」や「自尊心」を育む教育プログラムは殆ど見当たりません。ここに「自分らしさ迷子」や「不登校」を量産する要因がある気がします。ゲームや買物などの行動依存、アルコールや薬物などの物質依存、親子関係や夫婦関係などの人間関係依存・共依存も「自分らしさ迷子」が深く関係しているのではないでしょうか。心の穴を何かで埋めようとする行為が依存の本質だとしたら、「科学的自己理解」や「社会脳」から生まれる良好な人間関係の構築は、その穴を埋める有効な手段になり得ます。
 会社員時代、私は、時代のニーズに合った改善・改革に努めました。その一例が会社と社員の双方に大きなメリットをもたらす「確定拠出年金(DC)制度」の導入です。事業を導入する際、中核となる要素に、社会性・新規性・信頼性が挙げられます。私たちの脳は生得的に「社会を構築することができる機能」をもっています。だから社会を形成することで生き延びてきました。これを「社会脳」と呼びます。今の時代こそ、波乱万丈な人生のハンドルをしっかり握り、レジリエンスを高める「社会脳」を最大限に活用させなければなりません。
次回は、「社会脳から見た自分らしさ」について、お伝えしたいと思います。

社会脳を軸に人と組織を支援する
ブレインアナリストプロ            
岡崎市葵倫理法人会 副事務長